PTA広報部より 書籍紹介 その２
「52ヘルツのクジラたち」 町田そのこ著 2021本屋大賞第1位
52ヘルツのクジラとは、他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で最も孤独な鯨とされています。
この物語は「貴湖(きこ)」という名の、暗くて深い海のような心を持った20代女性のお話です。母親から愛された記憶はほとんどありません。そんな貴湖が親元離れ、誰とも関わり合いのない大分の海辺の田舎町へ引っ越した場面から始まります。
貴湖には世界で一番大切な失いたくない人がいました。アンさんと言います。でも、アンさんは自ら命を絶ってしまいます。アンさんも暗くて深い心を持っていました。誰にも言えなかったのです、ジェンダーであることを。貴湖にはアンさんの52ヘルツの声が聞こえなかったのです。その負い目があったのか、貴湖は田舎町で出会った虐待を受けている少年を助けようと一生懸命その少年の心の声(52ヘルツの声)を聴こうとします。実は少年は最初から貴湖の52ヘルツの声を聞いていたのです。少年は虐待している母親から逃れ、親戚の祖母に引き取られます。貴湖はみんなに支えられ生きてこられたことに感謝し、自分も人を支えて生きていこうと決意したとき、暗い深い海のような心に明かりが灯り、豊かな心に変わっていったのです。
私もこの本を読んで『心が豊かになる』のは自分自身の気持ちが大切であると学びました。著者の町田そのこは表現もおもしろいと思いました。ぜひ、みなさんにも読んでいただけたらと思います。
