著者 カズオ・イシグロ
書名 『わたしを離さないで』
出版社 早川書房
発売年 2006年4月
臓器提供のために生み出されたクローン人間の育成施設の話です。物語のキーワードとして世間と遮蔽された閉鎖的な施設「へールシャム」、提供者、介護人、といった言葉が出てきます。クローンとして生まれどんなに希望を持ってもどんなに教養を身につけても臓器を提供することで死ぬ運命にある若者たち。作品の後半にかけて読者は様々な事実関係を把握できますが、そこまで登場人物やその背景を読み進めていくうちにこの小説の描写が素晴らしく引き付けられて楽しんで読み終えられます。
作者は「限られた生の人がどう動くか描きたかった」と言っています。自分たちが生きている意味、生きていく意味、人類が向き合いつつある生命課題を強烈に問いかけてくる小説です。
3年目を迎えた新型コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵略戦争、複雑な世界情勢の昨今、人間にとって大事なことは、幸福とは、命とは、何であるかあらためて考えさせられる一冊です。
2016年にはTBSでドラマ化されています。お薦めの一冊ですのでぜひ、読んでみてください。